持株比率算出方法の落とし穴

役職員とオーナーのストックオプション(SO)の取扱い
持株比率の計算上、通常SOは潜在株数として発行済株式数に加算するが、役職員が保有するSOは、未行使の間加算されない為、変更報告書の提出要件に気が付かない事例がある

今回のテーマ:持株比率の算出方法

題材:令和3年6月1日 変更報告書 ユナイトアンドグロウ社(マ4486)

変更報告書を見る際には、

「株券保有割合の1%以上減少」という記載が提出事由にある場合、

留保金課税を逃れるためにオーナーが保有株を売却したかなと推測してしまいます。

そもそもオーナーが自社株を売却するというのは、

株主からすれば「会社に何かあったのかな?」と、余計な連想をさせてしまいます。

従って、単に株式売却資金を得たいという理由だけでは、ハードルが高いです。

しかし、報告書に記載されている株券等の保有割合の算出方法には、落とし穴があります。

額面通りに受け止めてはいけないという話です。

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留保金課税について

企業が配当する場合、配当金を受け取った株主は所得税を支払います。

仮に企業が配当を支払わずに内部留保とした場合、国は税金を取ることができないので、代わりとして内部留保金額に対して課税します。

同族関係者で議決権の50%超を保有していると留保金課税の対象となります。

同族関係者が自社株を50%超保有している場合には、課税から逃れるために保有比率を50%以下にすることがあります。

株券等保有割合について

オーナーが提出者である場合、この比率の算出方法は以下の通りです。

(自分の保有株数+自分のストックオプション、以下SO)/(発行済株式数+自分のSO)

報告書上、SOは「保有潜在株券等の数」として記載されます。

本件では、200,000株が該当します。

株式売却後の株券等保有割合は、以下のように計算しています。

【株式売却後の変更報告書上の保有割合】

(1,701,100+200,000)/(3,677,000+200,000)=49.04%

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報告書によると、直前の報告書に記載された保有割合は50.15%です。

議決権で考えると、行使されていないSO分の200,000/3,677,000=5.43%が、保有割合に上乗せされていることがわかります。

議決権の割合で考えると、保有株を売却する前の時点で、50.15% – 5.43% = 44.72%が実際の保有割合となります。

従って、株式を売却する前の時点で、既に留保金課税の対象である50%超を割り込んでいることがわかります。

従って今回の売却目的が、留保金課税を逃れるためではなく、単なる売却だと推測されます。

役職員のSOはどう扱うのか?

かなりレアケースですが、役職員が付与されたSOを行使した場合に、オーナーの持株比率が減少することがあります。

本来であれば変更報告書を提出しなければならないのに、気が付かず後から慌てて提出するケースがあります。

これは役職員のSOに関して、持株比率を計算する際に、分母に組み入れないことに起因します。

あくまでも権利行使後に発行済株式数に加算されることになります。

要するにオーナーのSOとは異なり、役職員のSOは未行使の間は計算されませんが、行使されると即、発行済株式数に加算されることになります。

あくまでも変更報告書の提出要件は、「前回の報告書より株式保有比率が1%以上増減した場合」です。

前回報告書を提出してから、何処かの時点で役職員がSOを行使した場合

持株比率の計算上、分子が変わらない中で分母の数字が大きくなることで、前回の報告時点より保有比率が1%以上減少するケースが発生するのです。

恐らく、役職員がいつ権利を行使したかなど、オーナーが逐次状況を把握しているとも思えません。

あとから変更報告書の提出が漏れていたと言われても・・。

オーナーが気の毒な感じがします。

まとめ

今回は、変更報告書に記載する株券等保有割合の計算方法について、陥りやすい点を具体例を用いながら考えてきました。

報告書を見た時に、潜在株券等の数が記載されているときは、これらの点に注意して内容を見るようにしましょう。

 

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