今回は、デザイン雑貨、エコ雑貨等の企画販売を手掛ける株式会社トランザクション(7818 東証1 時価総額320億円)の話題です。
共同保有者が増加したこと
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概要
石川社長のご夫妻が合算で1.02%分の自社株式を、資産管理会社(株)石川商事へ移動しました。
開示情報を見て思う事①
石川商事は、2020年6月19日に設立された資産管理会社です。
一方で、今回の株式の移動が実施されたのは、2021年8月23日との事ですから、明らかにTOB規制が外れる1年経過後を意識しての動きだったと推測します。
恐らく昨年から予定されていた株式の移動だと思います。
TOB規制とは
証券取引所内外、どちらの取引であっても、買付け後の株式所有割合が3分の1を超える場合は、TOBによる実施が義務付けられています。
株券所有割合の計算に当たっては、買付者本人だけではなく、買付者と密接な関係を有する一定の者(特別関係者)の所有分も合算することとされています。
ポイントは買う人を中心に考えることです。
特別関係者とは
- 買付者の親族 具体的には、配偶者、1親等内の親族及び姻族が該当します。これに兄弟は含まれません。
- 買付者が20%以上出資している資産管理会社
- 資産管理会社の役員
資産管理会社の特別関係者の範囲
- 資産管理会社の役員
- 資産管理会社に議決権20%以上出資している人とその親族
- 資産管理会社が主宰法人の議決権20%以上保有していた場合、主宰法人が保有している自己株式と、その役員が保有している株式
- 議決権の共同行使することを約束した人及び相互の株式の譲渡を合意している人
TOB規制の除外規定
こうなってしまうと、オーナーが少額の株式を移動させる場合であっても、特別関係者の所有分を合算する関係で、市場取引とするか公開買付が必要となる可能性があります。
これでは、あまりに事務が煩雑になることから、保有比率が3分の1超となる取引であっても、特別関係者間であれば売買してもよいという特例があります。
特別関係者間の売買とは
1年間継続して特別関係者であった場合には、資産管理会社へ株式を移動しても公開買付によらなくてもいいことになっています。
開示情報を見て思う事②
今回の株式移動によって、奥様の株式保有比率が3%未満となったことから、配当金にかかる税率を20%とすることが目的だったと思われます。
資産管理会社の株式取得資金321百万円は、全額、石川社長からの貸付金となっています。
従って、奥様が売却によって得た売却代わり金は、単に石川社長から奥様に資金が付け替えられただけです。
お子様2名へは、既に7%強が贈与されていることから、石川商事の出資者構成は100%が石川社長と考えるのが合理的だと思います。
まとめ
通常、個人で株式を保有するよりは、資産管理会社で保有する方が、税制上は有利だと言われています。
それは、資産管理会社株式の評価額は、相続税評価額で計算した会社の純資産価額から、資産の含み益にかかる法人税相当額(37%)を引いて求めるからです。
ただし取得後3年以内の不動産は、会社の純資産価額の計算上、通常の取引価額で評価するため、節税メリットは少なくなります。