資産管理会社における事業承継税制

今回は、名古屋に拠点を置く物流センター一括受託業務のトランコム株式会社(9058 東証1 時価総額850億円)の話題です。

出所:2021年10月7日 トランコム株式会社
その他の関係会社の異動に関するお知らせ
適時開示情報閲覧サービス
2021年10月8日 変更報告書 株式会社AICOH
商号変更のため提出するもの
EDINET

概要

創業家、武部篤紀氏の資産管理会社であるラネット(株)が、子会社である(株)AICOHを吸収合併し、社名をラネットからAICOHへ商号変更しました。

ラネットは、上場企業であるトランコム(株)の株式を、26%保有する会社ですので、本来は開示対象となる親会社等に該当していたはずです。

しかし、諸般の理由からこれまで開示していなかったようですが、今後は開示するというものです。

財務諸表規則による関係会社とは?

関係会社とは、包括的な概念で、親会社、子会社、関連会社、その他の関係会社を指します。

関連会社とその他の関係会社の違いは?

  • その他の関係会社とは、当社へ重要な影響を及ぼす会社をいいます。
  • 関連会社とは、当社が重要な影響を及ぼす会社をいいます。

開示情報を見て思う事①

今回で言えば、ラネットがその他の関係会社、当社がトランコムに該当します。

開示資料からは、ラネットは、トランコムの株式だけを保有する資産管理会社であったことから、親会社等の開示をする必要はないと考えていたようです。

ちなみに東証のルールでは、ビジネスを行わない、純粋な資産管理会社であれば、開示対象とはならないという例外規定があります。

しかし、ラネットは、100%子会社として食品卸業を営むAICOHを持っていました。

ラネットの解釈としては、自らは食品卸業を営んでいないので、純粋な資産管理会社として開示する必要はなかったと判断していたようです。

実態としては、ラネットが食品卸業を営んでおり、東証より開示のルールに反しているとの指摘がされる可能性があったのかもしれません。

開示資料の文面もこの点に関しては、非常に苦しい説明をしています。

今回、ラネットがAICOHを吸収合併することを機に、開示の対象となる親会社に該当すると説明しています。

開示情報を見て思う事②

今回、ラネットはAICOHを吸収合併した後に、商号変更を行い、AICOHへ名称を変更しています。

吸収合併する前のラネットは、純粋な資産管理会社ですので、AICOHが持っている食品卸の許認可やネットワークを生かすために、AICOHに名称を変更したと推測されます。

開示情報を見て思う事③

ここからは、あくまでも勝手に推測した内容ですので、真偽のほどは定かではありません。

今回、ラネットは、AICOHを吸収合併しました。

すなわち、資産管理会社が、既存事業や人材を引き取っていますので、新AICOH(旧ラネット)においては、事業承継税制が使える可能性が出てきたのです。

特に上場企業オーナーの資産管理会社が、事業承継税制を使うことはかなりハードルが高く、実際には難しいと言われています。

資産管理会社で事業承継税制を使うことが出来れば、相続時に納税を猶予することが出来ますので、税務署もやすやすとは認めてくれません。

まず事業承継税制を適用するには、一定の形式要件を満たす必要があります。

通常、資産管理会社における上場企業株式の評価は、時価を使用しますが、事業承継税制では、簿価を使用します。

もし今回、旧ラネットが、簿価の低いトランコム株式を保有していたとすると、上記の形式要件を満たす可能性が高まるのです。

詳細は別の機会に譲りますが、AICOHの吸収合併によって追加される従業員やモノと、簿価の低いトランコム株式とを組み合わせると、形式要件を満たしやすくなるからです。

まとめ

今回は、一見すると単に、上場企業の親会社決算を、今後は開示するという内容ですが、本当の狙いは、事業承継税制を活用する相続対策だったのかも知れません。

通常、上場企業の資産管理会社では、事業承継税制は使えませんが、事業会社を吸収合併することで、それが可能になるかもしれません。

この場合には、簿価の低い自社株を資産管理会社が保有していることが前提だと思われます。

 

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