本日は、今年1月21日に大株主である日本製鉄(株)に敵対的TOBを仕掛けられた東京製綱株式会社(5981 東証1 時価総額178億円)の話題です。
「主要株主である筆頭株主による当社株式売却の予定に関するお知らせ」
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概要
東京製綱(株)の筆頭株主である日本製鉄(株)が持株比率を、19.9%から10%以下へ、株価が1,500円を超えたら株式を売却する計画であると発表されました。
開示情報を見て思う事①
日本製鉄は、今年の1月に敵対的TOBを仕掛け、持株比率を9.9%から19.9%へ引き上げたばかりにもかかわらず、半年後に再び株式を売却するとは、どういう事情があったのでしょうか?
TOBを発表した当時から、20%未満の持株比率という持ち分法適用会社適用をあえて外したTOBに対して、中途半端ではないかという評価があったのは事実です。
当時の東京製綱の経営陣と日本製鉄との間の確執が取りざたされた中、3月にTOBは成立し、実力派会長が退任、6月の定時株主総会では、旧経営陣の大半が退任しています。
あくまでも推測ですが、日本製鉄側が資本の力を使って、東京製綱側にお灸をすえるという目的を果たしたことで、もとの形に戻したのかも知れません。
開示情報を見て思う事②
日本製鉄の売却予定価格である1,500円以上は、TOB価格と同額以上であり、現在の東京製綱の株価1,092円からすると、40%以上株価が上昇する必要があります。
この値段設定は、始めから売る気あるの?というのが第一印象です。
敵対的TOB以降、東京製綱の株価は右肩下がりであり、経営陣の刷新で大きく業績を伸ばすことができればいいのですが、どうでしょうか?
開示情報を見て思う事③
普通の状況では考えにくい今回の発表を深読みすると、東京製綱をプライム市場に上場維持させる為ではないかと考えれば、合点がいきます。
東京製綱の時価総額は、現在178億円、うち日本製鉄保有分が約35億円です。他の固定株主を考慮すると、東京製綱の流通株式の時価総額は、プライム上場維持基準である100億円に近似しているかもしれません。
仮に今年9月から12月の間に上場維持の形式基準を充足していないと、東京証券取引所に改善計画書を提出しなければなりません。
東京製綱の筆頭株主が売却の意向を表明することで、プライム維持を狙っているのかも知れません。
まとめ
日本製鉄からすれば、子会社である東京製綱がプライムから外れることは、望ましい事ではありません。
また、世間の噂が正しければ、東京製綱の経営陣を総取り換え出来た訳ですから、TOBの当初の目的も果たすことが出来ました。
後は、株主への説明責任を果たすためにも、最低限TOBに費やしたコストだけでも回収出来れば、問題なしというところでしょうか?
あまりにも企業規模が異なる親子間でのいざこざを収めるには、ちょうど市場区分の変更という大義名分が必要だったということかもしれません。