今回は企業向けソフト開発を手掛けるSun Asterisk(4053 マザ 時価総額920億円)の話題です。
株券等保有割合の1%以上の減少
EDINET
有価証券報告書 株式会社Sun Asterisk
概要
前回に引き続き、時価発行型新株予約権が条件を満たさなかった為、権利が失効して(潜在)保有株数が3.42%減少したという内容です。
委託者は、同社の創業者である平井誠人氏、受託者は税理士の平野俊博氏、信託財産は時価発行新株予約権です。
開示情報を見て思う事①
こうしたインセンティブプランは、役職員の頑張りに報いる為のスキームです。
発行体が新株予約権を発行した段階では、まだ渡す相手は入社していないので、とりあえず新株予約権の評価が低いうちに、信託の器で預かっておこうというものです。
その後で、入社した役職員が期待通りの業績を上げた暁には、新株予約権を割当て、権利行使し、株式を売却することで利益を得ます。
開示情報を見て思う事②
本来は会社の為に頑張った訳ですから、発行体から支給されるのが筋ですが、今回は個人である平井氏が代わりに自分の株式を取得できる権利を提供している訳です。
あいにく、対象期間に該当者がいなかったことから、権利が失効したということです。
開示情報を見て思う事③
今回のように個人が新株予約権を拠出する場合、その評価額を算出するのはコストが伴う為、同じタイミングで、発行体が新株予約権を発行するケースが大半です。
結果として、発行体が予約権を発行する内容と条件が同じになるということです。
有価証券報告書によれば、新株予約権の評価は1個あたり2円で、権利行使により発行する株式の価格は,1,602円です。
行使条件は、営業利益が600百万円以上であれば、権利が付与されるとのこと。
2020年12月期の営業利益が886百万円なので、業績条件は充足したものの、対象者がいなかったのだと推測されます。
個人の平井氏にとってみれば、発行済株式の3%程度の新株予約権を役職員に渡したとしても、会社の業績を上げて、株価も上がれば、自らの保有株の評価があがり、安い投資だと思います。