共同保有者とは
共同保有者の開示ルール
今回の話題
191億円!孫社長が保有株式を224万8200株売っていた
本当に孫社長は、自社株を売却したのか?
ソフトバンクグループは、5月13日に開かれた2021年3月期決算説明会において、国内企業で過去最大の4.99兆円の純利益を達成したことを発表しました。
プレゼンの最後に『踏切の向こうには夢がある。まだ踏切を渡り切れていない。』と語った孫社長が、果たして自社株を売るでしょうか。
そこで、ネタの出どころである変更報告書を詳しく見ていきたいと思います。
変更報告書とは?
変更報告書は、大量保有報告書の提出後に、重要な事項の変更があった場合に提出する書類です。
通常、企業オーナーの場合、上場する際に大量保有報告書を提出します。
その後、株券を売買する等で株式保有割合が、1%以上増減すれば報告しなさいというルールです。
・株券等の保有割合が1%以上増減した場合
・住所や氏名に変更があった場合
・株式を担保に入れる場合
変更報告書の提出期限は?
報告義務発生日の翌日から5営業日以内に提出しなければなりません。
変更報告書の提出義務者は?
変更報告書の提出義務者は、過去に大量保有報告書を提出した者、つまり上場株式の保有比率が5%超の者です。
共同して株式を保有している場合には、提出義務者は単独ではなく、グループとして合算して報告する必要があります。
共同保有者とは?
共同保有者は、実質共同保有者とみなし共同保有者に分類されます。
実質共同保有者とは、お互いに株を保有することに合意している者です。
みなし共同保有者は、①配偶者と、②50%超の議決権を保有する資産管理会社が該当します。
ここで曲者なのは、共同保有者には成人の子供を含める必要がないことです。
疑問を解くカギは、共同保有者の減少!
変更報告書によれば、共同保有者の減少が今回の提出事由となっています。
今回の疑問を解消するカギは、この共同保有者の減少というキーワードに反応できるかどうかです。
現在、孫社長は3社の資産管理会社を保有しているようです。
では、減少した共同保有者とは誰なのでしょうか?
これを探るには、孫社長から提出された過去の変更報告書を遡る必要があります。
2021年2月9日に提出された変更報告書には、現在の3社の他に孫エステートという資産管理会社が記載されています。
恐らく孫エステートが、今回減少した共同保有者と考えて間違いがないようです。
どうして孫エステートは共同保有者から外れたのか?
孫社長の共同保有者である孫エステートは、孫社長が50%超の議決権を保有する資産管理会社です。
従って、孫社長の(みなし)共同保有者として、重要な事項の変更があった場合には、変更報告書を提出しなければなりません。
仮に孫エステートの株を他人に譲渡し、社長の持分が50%以下になると、同社は孫社長の共同保有者ではなくなります。
仮に株の譲渡先が、社長のご子息の場合であれば、同社はご子息の資産管理会社となりますが、開示されないはずです。
先ほど書きましたが、社長のご子息の持分は開示する義務はないからです。
これで孫エステート(=孫社長)が保有しているソフトバンクグループの株は、開示されることなく、ご子息へ移すことが出来るはずです。
まとめ
ご子息にソフトバンクグループの株を直接贈与すれば、孫社長は変更報告書を提出し、情報を開示する必要があります。
しかし、資産管理会社を経由して間接的に贈与することで、情報開示の義務から逃れることが出来ます。
孫社長(グループ)の持分減少の理由が、共同保有者の減少であると変更報告書に記載されているからといって、額面通り受け止めるのはいかがでしょうか?
将来値上がりを確信している自社株を、みすみす安い価格で売却するよりも、割安な時に子供へ贈与するほうが真実に近い気がします。
No.132(提出日 令和3年5月20日)
No.131(提出日 令和3年2月9日)
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