開示されている情報に基づいて、企業オーナーがとった行動の背景を推測するシリーズ。
今回の材料は、東京23区を中心に保育所「さくらさくみらい」を直営で運営する企業、株式会社さくらさくプラス(7097 マザーズ)の開示情報です。
2021年6月21日 変更報告書 「担保契約等に係る重要な契約の変更」
西尾義隆氏、中山隆志氏、森田周平氏
https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/
開示内容は?
共同創業者である西尾社長、中山副社長、そして森田専務が、同じタイミングで情報を開示しました。
各々が代表取締役を務める資産管理会社にて、2021年6月17日付けで大和証券との間で有価証券担保設定契約を締結したというものです。
西尾社長が400,000株(約9億円)、中山副社長が400,000株、森田専務が70,000株を担保として拠出しました。
複数役員による担保設定
会社役員が自社株に担保を設定すること自体は、何も珍しい事ではありません。
ただ、今回は、社長、副社長、専務が揃って、同じタイミングで担保契約を締結したのが、珍しかったので採り上げました。
あれ?って思ったことは
今回、3人の役員は全員が、大和証券との間で担保を設定していますが、会社の主幹事証券会社は日興証券です。
しかも昨年のコロナ禍の中、上場したばかりですから、それなりにお世話になった主幹事証券が相手でないのはどうしてなのでしょうか?
勝手な推測ですが
上場して日が浅いオーナーは、通常、手元に潤沢な現金を持ち合わせていません。
何らかの資金需要が発生した場合であっても、自社株を現金化することは出来ませんので、自社株を担保にした借入に頼ることになります。
流動性等の観点から、金融機関によっては、新興市場の銘柄を担保として預かることが出来ない場合があります。
今回のさくらさくプラスは、マザーズ上場銘柄ですので、もしかしたらこうした事情が影響したかもしれません。
ただ、主幹事証券であれば、こうした事情も配慮すると思いますので、他社で担保設定が行われるというのは、何かあったのでしょうか。
IPOの時には、ほとんど付き合いのなかった大和証券に、株券を移管する訳ですから、何か魅力的な提案があったのでしょうか?
いずれにしても、日興証券の担当者は心穏やかではないことだけは確かです。