MBOにおけるファンドと後継者の関係

今回は、福井市に本社を置く繊維・アパレル製造販売のサカイオーベックス株式会社(3408 東証1 時価総額245億円)の話題です。

出所:2021年9月9日 変更報告書No.3 サカイ繊維株式会社
共同保有者が増加したこと及び株券等保有割合が1%以上増加したこと
EDINET

概要

創業家出身ではない松木氏の資産管理会社であるサカイ繊維と、旧村上ファンド系のシティインデックスイレブンスによりMBOが成立しました。

開示情報を見て思う事①

今回、増加した共同保有者は、ファンドのシティインデックスですが、そもそもサカイ繊維とは関係がないようです。

通常のMBOでは、MBOの受け皿となるSPCに、後継出資者とファンドが出資し、これに金融機関が融資を行います。

MBOの成立後は、上場会社を非公開化して、合併あるいは100%子会社化します。

従って、普通はSPC単独での変更報告書となります。

しかし、今回はSPCとファンドの連名での変更報告書となっているので、違和感がありました。

開示情報を見て思う事②

創業家がMBOを実施する際、2段階の手順を踏むのが一般的です。

まず保有する資産管理会社とは別にSPCを組成します。

その後、MBO成立後に発行体による金庫株取得によって、資産管理会社の保有する株式を買取ります。

この方が、SPCへ株式を譲渡するよりも税務的に有利だからです。

サカイ繊維がSPC、シティインデックスが資産管理会社であれば普通のMBOなのですが、今回は違うようです。

開示情報を見て思う事③

SPCからすれば、株式買取資金の返済は、可能な限り早く完了させたいので、特別配当によって資金を吸い上げるはずです。

発行体の最終的な株主構成をSPC90%、ファンド10%と仮定すると、ファンドにも多額のキャッシュが流れます。

旧村上ファンド系のファンドですから、この点も考慮しているはずです。

開示情報を見て思う事③

実はサカイオーベックスは、今年の2月に一度MBOを失敗しており、ファンドはその後3月から株式を買い集めています。

抜本的な事業構造の変革を訴えてきた松木社長にとっては、ファンドのサポートを受けながら非公開化し、再上場を目指す道を選んだのかも知れません。

ネットに流れている情報には、MBO失敗後、村上氏に相談を持ち掛けたような話もありますので、2度目のMBOに向けてファンドが協働したのかもしれません。

あるいは、サカイオーベの弱みに付け込んで株式を買い集め、高値で売り抜けるのではというストーリーも考えられます。

サカイオーベとの間で希望買取価格が折り合わなかった結果、今回のMBOに応募せず、より高い価格が見込める再上場まで株式を保有することにしたと考えても不思議はありません。

まとめ

ファンドからのアドバイスを受けて企業価値を高めていくことを是とするのか、ファンドから経営に口出しをされ、経営の自主性が損なわれることを非とするのか、どちらを選択するのか難しい問題です。

MBO議案に関して議決権を共同して行使することから、実質共同保有者としてSPCとファンドは、一緒に変更報告書を提出しなければならなかったことから、今回の公開情報となりました。

ファンドは、企業価値が向上することで、今以上に高い価格でのエグジットを目指している事だけは確かです。

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