自己株式取得の方法➃ 自己株式消去の目的は?

今回は、上場企業のディスクロージャーやIR資料作成の大手である、株式会社プロネクサス(7893 東証1 295億円)の話題です。

出所:2021年8月6日 変更報告書No.12 株式会社プロネクサス 上野守生氏 
「株式等保有割合が1%以上減少したため」 
EDINET https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/ 
「自己株式立会外買付取引(ToSTNeT-3)による自己株式の取得結果および自己株式の取得終了に関するお知らせ」 
適時開示情報閲覧サービス https://www.release.tdnet.info/
・変更報告書に記載される「市場外取引」には、以下の3つが含まれている
①自己株TOB
②相対取引
③ToSTNET3

・市場区分変更における流通株数比率の引き上げに、自己株式消去も効果的である。

概要

(株)プロネクサスの上野会長が、保有する自社株を現金化(約9億円、3%強)しました。

変更報告書には、市場外での売却と記載されていたので、プロネクサスの適時開示を見に行くと、ToSTNET3での自己株取得との情報がありました。

推測ですが、上野会長は、ToSTNET3により保有株を売却したと思われます。

開示情報を見て思う事①

適時開示情報には、次の情報がありました。

「当社は 2021 年8月 23 日付で取得した自己株式を消却する予定です。」

自己株式の消却は、自己株式取得とは異なり、発行済み株数を減少させる行為です。

通常、自己株式消去は、発行済み株式数の適正化を図って行われますが、影響も大きいですから、取締役の過半数による決議が必要です。

株数が減少する訳ですから、1株当たり利益が上昇するので、希薄化の懸念がありません

従って、既存株主の不安を払拭するというメリットはあります。

一方で、議決権比率が上昇することにより、会社の支配権が執行部に奪われるといったデメリットもあります

開示情報を見て思う事②

今の時期は、どうしても市場区分変更との関連性からこうした情報を見てしまいます。

今回の自己株式消去も、もしかしたら市場区分変更への対応かも知れません。

なぜなら、企業オーナーが保有する固定株を、会社が自己株取得するだけでは固定株に変わりなく、流通株式比率に変化が生じないからです。

あえてオーナーから買い取った固定株を、流通株に変換することが目的と考えると、今回の取引は合点がいきます。

会社が買い取った自己株式を消却すれば、発行済み株式数がその分減少することにより、流通株比率が上昇するからです。

過去に、オーナーから買い取った自己株を、会社がわざわざ償却するという取引はあまり聞いたことがないのです。

まとめ

あくまでも推測ですが、今回の取引には2つの狙いがあったのではないでしょうか?

①オーナーの資金ニーズに対して、会社が自己株取得という手段で現金化に対応したこと

②会社の市場区分変更への対応ニーズに対して、オーナーが保有する株式(固定株)を売却し、流動比率を高めたこと

上場企業のIRサポートをビジネスにしている(株)プロネクサスならでは、うまい組み合わせだと思います。

ただ、自己株式消却という手法は、メリットとデメリットがあります。

市場区分変更への対応という目的だけで、自己株式消去を行うには、一般株主への説明責任の問題があります。

従って、どんな上場企業でも使える手法ではないことは確かだと思います。

 

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