事業承継型MBO

今回は、愛知県に本社を置くオフィス家具販売のオリバー(7959 東証1)を題材に、事業承継を目的とした(と推測される)MBOを採り上げます。

非上場かつ非同族会社の株価評価
相続税評価額の引き下げ効果
MBO後の出口戦略
・MBOにより上場企業株式が、非上場かつ非同族株式となり、相続税評価額が大幅にダウン
・低い評価額の株式を後継者に譲渡することで相続税負担を軽減
・オーナー一族はファンドに出資することで、ファンドのEXIT後も支配権を確保
出所:株式会社オリバー
2021年6月22日「MBOの実施及び応募の推奨に関するお知らせ」
適時開示情報閲覧サービス https://www.release.tdnet.info/

開示情報の内容は?

買付者は、スカイマークの再建に腕を振るった佐山展生氏がパートナーを務めるエクイティ投資ファンドのインテグラルです。

仕掛け人は、ファイナンシャルアドバイザーの野村証券です。

取締役会の決議による友好的なMBOですから、オーナーである大川氏も応募し、最終的にはオリバーはインテグラルが用意した法人(N社)と合併して上場廃止となります。

本件のポイント

本件のスキームは、事業承継と経営権の確保という観点から、非常に良く練られた内容です。

ポイントを順次見ていきます。

オリバーの財務状況はMBOを実施しやすい状態

オリバーは、いわゆるキャッシュリッチ企業であり、企業価値の代表的な指標である企業価値/EBITDAでも4倍程度(通常は7倍が目安)と割安です。

これは、N社が準備すべき株式買取資金が少なくて済むことに繋がります。

時価総額が350億円なのに、オリバーは現金を215億円も保有しています。

N社は本来であれば、350億円以上の買取資金が必要なはずですが、今回、所要金額の上限は40億円と、かなり小額に抑えることが可能となっています。

またN社に資金を融通する金融機関からすれば、企業価値が割安なため、融資金回収の目処が立てやすく融資しやすい状況です。

MBOにより上場企業株式は、非上場かつ非同族会社株式へ

未公開会社株式の相続税評価額は、類似業種、純資産、配当還元方式という3つの評価方法があります。

評価方法を決める際には、まず同族企業かどうかを判定します。

MBOによって、オリバーは非上場企業となり、合併後のN社が全ての株式を保有する訳ですから、同族企業には該当しません

従って、一番有利な評価方法である配当還元方式となるはずです。

配当還元方式で計算した株価は、現在の株価より安くなるのが通例です。

大川氏は、N社へ出資する契約

本件の最大のポイントはこの契約内容です。

公開情報によれば、大川氏とその資産管理会社は、MBOに応募した後、その売却代金を使ってN社に出資するとの事です。

その割合は、1%から3分の1未満の間とのことですが、恐らく3分の1ギリギリまで出資すると考えるのが自然です。

出資後に評価の下がったN社株を、大川氏あるいは資産管理会社が後継者に譲渡することで、将来の相続税負担を引き下げる資産承継が可能です。

N社は順調に業績を伸ばし再上場へ

インテグラルの主導により、めでたくMBO後のN社が順調に業績を伸ばすことが出来れば、インテグラルは投資目的を果たす為(EXIT)に、N社を再上場させるはずです。

N社がEXITする際に、インテグラルの持分(3分の2超)は不特定多数の投資家に渡るのが普通です。

結果として、再上場後の新生オリバーの株主構成は、大川氏とその資産管理会社(3分の1未満)、不特定多数の投資家(3分の2超)となります

今回の契約には、大川氏と大川氏の後継者もN社の経営陣として引き続き同社に残ることになっています。

経営が順調に進み、再上場した暁には、大川氏と後継者は、相続対策も終わり、大株主の立場と名経営者としての評判を手にする仕組みです。

まとめ

このシリーズでは、公開情報だけを頼りに、企業経営者の行動の背景を探っています。

表面上はコロナ禍によるオフィス家具市場の落ち込みのため、経営のプロであるインテグラルがテコ入れをするという内容です。

確かにこうした理由も背景としてあったと思われますが、オーナーからすれば、低い相続税評価額で後継者へ資産承継ができるメリットの方が大きいように感じます。

インテグラルも、コストを抑えた方法で、将来の値上がり期待が望める優良資産を手に入れるので、悪い話ではありません。

参加者全員が、win-winの関係になれる絵を描いた野村証券は、さすがだなと思います。

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