自己株式取得の方法① 市場内取引と市場外取引

市場内取引と市場外取引
ToSTNET3と公開買付
税務上の違い
・ToSTNET3は、制度上は市場内取引であるが、変更報告書上は市場外取引に分類される
・変更報告書の市場外取引には、ToSTNET3、公開買付があることに注意
太郎くん
今日は何を教えてくれるのですか?
チー坊

今回は次の内容を説明するよ

1.変更(訂正)報告書における「市場外」の意味

2.自己株取得手段について

3.市場内と市場外における税務上の取扱い

4.ToSTNET3の商品性について

【令和3年6月3日付訂正報告書】

Meiwa 1

1.変更(訂正)報告書における「市場外」の意味とは

自己株取得とは、発行企業が、自己株式を取得し償却せずに資産として保有するものです。

特に企業オーナーが、発行企業に対して自己株式を譲渡する場合には、大きく分けて2つの手段があります。

市場を通す市場内取引(通常の市場売買、ToSTNET3)と市場外取引(公開買付、相対取引)です。

ToSTNET3は、市場を経由した取引なので、制度上は市場内取引として取り扱いますが、変更報告書上では、「市場外取引」に区分されます。

その原因は、いわゆるホリエモン事件が契機であったと言われています。

実態と表記上に違いがあることから、注意が必要です。

変更(訂正)報告書における市場外取引は、ToSTNET3と公開買付が該当する

2.自己株取得手段について

それぞれの手段について考えていきます。

まず、通常の市場売買では、取得株式数の上限が設けられています。

従ってオーナーが発行企業に対して、まとまった数の自社株を売却するには、時間がかかり現実的ではありません。

ToSTNET3は、市場を経由しますが、買い方を発行企業に限定しており、その意味では自己株取得の専用取引と言えます。

実務上は、前日に売却条件が東証に伝えられ、翌日の市場が開く前に取引を成立させます。

そのため、実質的には市場を通した相対の自己株取引と言えます。

公開買付は、上場企業が取引所市場外で自己株を取得する場合、特別決議がある場合を除いて、その株数にかかわらず、公開買付で行わなければならないと法律で決められています。

市場外で取引を行う場合には、この方法に依らねばなりません。

実務上は、自己株取得取引には、ToSTNET3(市場内)か公開買付(市場外)が用いられる

3.市場内と市場外における税務上の取扱いについて

発行会社の税務上の取扱いは、市場での売買(市場内)の場合には、通常の売買と同じ譲渡益課税の扱いになります。

従って、ToSTNET3での取引は譲渡益課税の対象です。

一方、公開買付は、みなし配当課税の取扱いになります。

そもそも発行会社からすれば、自己株式の取得は資本の払い出しですので、原則的な取扱いが適用されます。

ここで個人と法人とでは、税務上の取扱いが異なる点には注意が必要です。

みなし配当は、個人の場合は最高税率が55%、法人の場合は受取配当金の益金不参入の取扱いを活用できます。

従って、法人(資産管理会社)には有利な手段です。

一方、譲渡益課税は、個人の場合20%の税率に対して、法人は37%が一般的となります。

従って、個人に有利な手段となります。

ToSTNET3は個人オーナーに有利、公開買付は資産管理会社に有利

 

4.ToSTNET3の商品性について

今回、なぜ訂正報告書が提出されたのでしょうか?

他の適時開示資料からも、高杉氏の資産管理会社が発行会社である明和地所に、自社株を売却した事実は間違いありません。

しかし提出先である財務局からすると、譲渡の相手方として明和地所を記載するのは正確な表記ではないのです。

なぜならToSTNET3は、取引実態としては相対取引ですので、譲渡の相手方が明和地所となるのは自然な流れです。

しかし、制度上は市場内、つまり市場を通して不特定多数の買い手との取引を前提としている以上、譲渡先として明和地所を指定することは不適切な記載という理屈だと思います。

だから訂正報告書を提出させて、譲渡の相手方を未記載としたと推測されます。

Meiwa 2

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まとめ

今回は、オーナー個人ではなく、資産管理会社からの自社株取得(ToSTNET3)ですので、資産管理会社の税務メリットは少ないと推測されます。

一方で結構な額の株式譲渡益が、資産管理会社には計上されている可能性があります。

鼻が効く金融マンなら、この益金を打ち消すための金融商品を早速持ち込むのではないでしょうか。

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