ストックオプションと譲渡予約権

ストックオプション
譲渡予約権(信託)

今回は、「コンピューターの視覚を創る」、AI関連ビジネスを手がけているKudan株式会社のオーナー大野智弘氏が題材です。

最近導入する企業が増えているインセンティブプランについて考えていきます。

譲渡予約権(信託)は、オーナーがあらかじめ自社株を、役職員に付与する権利を確保することで、将来のインセンティブプランに活用する為の方法

【出所:変更報告書 令和3年6月4日】

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変更報告書提出事由: 株券等に関する担保契約等重要な契約を締結したため
概要: 「譲渡予約権」というインセンティブプランを導入した事例
ポイント: 譲渡予約権は、オーナーが従業員の為に発行するストックオプションのこと

今回、変更報告書の提出事由として、株券等に関する担保契約等重要な契約を締結したためと記載されています。

今日紹介するストックオプション、譲渡予約権に関する契約も重要な契約に該当する為、同じ箇所に記載されているようです。

インセンティブプランについて

企業が導入するインセンティブプランでお馴染みの「ストックオプション」は、あらかじめ決められた価格(権利行使価格)で株式を購入できる権利です。

役員や従業員に対して無償で割り当てられるのが一般的ですが、有償のものもあります。

ストックオプションは、発行会社が発行し、役員や従業員に割り当てるものです。

今回は自社株を保有しているオーナーが発行手続きを行い、役職員に付与するものを考えていきます。

譲渡予約権とは?

今回の変更報告書によれば、大野氏が役職員45人との間で契約を結びます。

これら役職員が大野氏に対して、「将来の特定期間内で、保有する株式の5%相当を売り渡すように請求出来る権利」を付与したとあります。

将来の特定の期間に一定の業績や株価条件を、達成した場合にのみ権利を行使できるとあります。

詳細は不明ですが、業績なり株価が上昇すれば従業員は権利行使して、株式を売却し利益を得られる構図です。

【変更報告書より抜粋】

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譲渡予約権信託とは?

今回は、既に権利を付与する相手が特定されています。

言い換えれば、既に社員として働いている人に対するインセンティブです。

しかし将来入社する社員や中途採用の社員にしてみると、「何故、先に入社しているだけでストックオプションが貰えるんだ?ずるいなあ」となる訳です。

そこで考えられたのが、

将来株式を取得できる権利を、

一定の条件を充足した人に付与するまでの間、

第3者(例えば信託銀行)に預かってもらう「譲渡予約権信託」という仕組みです。

優秀な人材が入社した後に新規でオプションを発行した場合、業績が向上するにつれてオプションの価格が高くなり、良い条件が出せなくなります。

あらかじめ価格が安いうちに準備したいとなるのは当然です。

特にスタートアップ企業を率いるオーナーは、

「優秀な人材に来て欲しいけど、高額な給与を出せない」、

「これまでのストックオプションでは、付与する相手が決まっていなければ発行出来ない」

といった悩みを抱えています。

こういった悩みを解決する仕組みとして譲渡予約権信託が誕生した経緯があります。

個人がインセンティブプランを付与する場合

 付与する相手が決まっている場合は「譲渡予約権」
 付与する相手が決まっていない場合 「譲渡予約権信託」

発行法人がインセンティブプランを付与する場合

 有償(一円)、無償(税制適格、税制非適格)「ストックオプション」

信託関係について

譲渡予約権信託は、信託設定の段階では、権利を付与される人(受益者と言います)がいないため、受益者不在の信託となります。

本来税金は、受益者に発生するものですが、不在であるため、本件を受託する受託者(信託銀行)に法人税が課税されることになります。

結果として将来権利を付与された人は、権利が付与された段階でも、権利行使した段階でも課税が発生しないことになります。

譲渡予約権信託の現状

信託銀行では、ある事情でこの譲渡予約権信託を取り扱っていません。

従って、これまでは信託契約を締結する場合、発行企業の顧問税理士や弁護士に依頼して、いわゆる「民事信託」として対応していました。

しかし最近では、正式な業務として取扱う信託会社が誕生し、企業のニーズに応えています。

まとめ

企業の競争力を左右する優秀な人材を確保したいという企業オーナーのニーズは強いです。

既存のストックオプションでは対応できないような場合、

オーナー自らが資金の出し手として、今回ご紹介したような譲渡予約権(信託)を活用する機会が今後増えていくと思います。

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