今回は、店舗数では国内1位のホームセンター、コメリ(8218 東証1 時価総額1,430億円)がESOPを導入した話題です。
株式給付信託(従業員持株会処分型)の導入に関するお知らせ
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概要
ESOP(Employee Stock Ownership Plan)とは、信託を通じた従業員持株制度の事です。
コメリは信託銀行と信託契約を締結し、保有する自己株式 約15億円相当を信託口座に売却。
信託銀行は、株式購入資金を金融機関からの融資で賄います。
信託で保有する株式は、今後5年間、従業員持株会が毎月積み立てている資金で購入していきます。
今回は、ESOP(Employee Stock Ownership Plan)を紹介します。ESOP東証での市場区分変更への対応を各社が進める中で、今回、株式会社ダスキンからESOPを導入することが開示されました。ESOPは、企[…]
開示情報を見て思う事①
ESOPは、発行体が自社株を保有している場合、その出口戦略として用いられます。
一旦、信託という器で引受けしますが、この器は自社株を取得する資金がないので、金融機関から融資を受けます。
この器には信用がないので、通常発行体がこの融資を保証します。
返済原資は、従業員持株会にて毎月積み立てている資金です。
この際、気になるのは取得簿価です。
従業員持株会は、毎月その時の時価で株式を買取りますが、ESOPの場合には、あらかじめ信託で購入した際の価格が取得簿価になります。
当然、持株会が取得する際の時価と簿価には差が出る為、譲渡益や譲渡損が計上されることになります。
譲渡益が発生した場合には、従業員持株会に還元し、譲渡損が発生した場合には、発行体がその分を被るというのがこの制度のミソであり、インセンティブプランといわれる所以です。
開示情報を見て思う事②
ESOPは、発行体にもメリットがあります。
インセンティブプランとしての魅力に加えて、仮に自己株式を外部で売却することになった場合、株式の希薄化が進み株価が下落する可能性があります。
一方で、従業員持株会の拠出金が少ないと、金融機関が融資するメリットが少なくなるので、それなりの規模の株式が必要となります。
通常、年間で2億円程度(5年間分で10億円相当)の拠出金がないと金融機関は融資を引受けないと言われています。
例えば、従業員が1,000人、1人当たり月2万円天引きとすると、年間で2億円となりますから、なかなかハードルは高いことがおわかり頂けると思います。
こうした背景もあり、またインセンティブプランも多様化が進んでいるので、ESOPの取扱件数もさほど多くはありません。