民事信託を活用した譲渡予約権信託

今回は、エネルギー革命を掲げるベンチャー企業のENECHANGE株式会社(4169 マザ)で、実際に取り組まれたインセンティブプランを紹介します。

民事信託
時価発行新株(譲渡)予約権信託
法人課税信託受益者不在型
出所 ENECHANGE株式会社
2021年6月24日 変更報告書 「株式等保有割合の1%以上の減少」
EDINET https://disclosure.edinet-fsa.go.jp/
譲渡予約権信託は、事前に新株予約権を第三者へ委ねることで、将来の人材確保の手段として非常に魅力的な手段である

内容

時価発行新株予約権信託の管理を任された会計事務所(受託者)からの開示情報。
受託者は、EXCHANGE社のオーナーである城口氏(委託者)から預かっていた新株予約権を、社員に交付した(と推測される)という内容です。
結果として、株式等保有割合が1%以上減少したというものです。

時価発行新株(譲渡)予約権信託とは

通常の新株予約権(ストックオプション、以下SO)は、既に会社に在籍している役職員を対象として、会社が発行するものです。
一方、譲渡予約権信託は、これから入社してくる優秀な社員へのインセンティブプランとして使われます
オーナーが保有する新株予約権を、信託という第三者に預かってもらい、信託の期間が到来したら社員に新株予約権を交付します。
信託は、既存の信託銀行が業務として扱う商事信託と、関係者間で契約する民事信託がありますが、本件は後者です。
関連記事

ストックオプション譲渡予約権(信託)今回は、「コンピューターの視覚を創る」、AI関連ビジネスを手がけているKudan株式会社のオーナー大野智弘氏が題材です。最近導入する企業が増えているインセンティブプランについて考えていきま[…]

Company

時価発行にする理由は

SOの場合、権利を付与された社員は、税制適格SOを除けば、権利を行使した際と、そのあと株式を譲渡した際に課税されます。
税制非適格SOのようにタダで権利を付与すると、行使した段階で給与として認識され、最高税率であれば55%が課税されます。
そこで行使した段階で課税されないように、時価で権利を付与するように工夫する必要があります。

譲渡予約権のメリット

通常のSOのように権利が付与される対象が決まっていれば、付与された社員が権利を付与された時点で権利の費用を払います。
しかし、譲渡予約権は付与される対象が未定ですから、代わりにオーナーが権利の費用を支払います。
では誰がこの資金を貰うかといえば、受託者である会計事務所です。
恐らく、税引後の金額で譲渡予約権を買取る流れになるはずです。
結果として、会計事務所が時価発行の資金を貰ったとみなされ、受贈益として課税されることになります。
このことから譲渡予約権信託は、法人課税信託受益者不在型と呼ばれています。
従って、将来権利を付与される社員は権利を受け取った際には課税されません
また権利を付与するオーナーは、まだ株価が安い時点でインセンティブプランとして新株予約権を準備することが出来ます

まとめ

今後、譲渡予約権をインセンティブプランの一つとして導入する会社が増えると思います。
特に、上場したての会社は、大概、資金繰りに余裕がない一方で、会社の成長のために優秀な人材を獲得する必要があります
オーナーが保有している株式を活用することで、こうしたニーズを解消するのが、譲渡予約権信託です。
Company
最新情報をチェックしよう!

企業オーナーの最新記事8件