財団法人への株式1円譲渡

今回は、「くらしの便利帳」など、地方自治体と協働して官民協働事業をすすめる、株式会社サイネックス(2376 東証1)が行った、財団法人への自社株1円譲渡を紹介します。

財団への1円譲渡は、自己株式の出口戦略の一つであるが、大義名分が必要
株式の有利発行であることから株主総会の特別決議が必要
出所 株式会社サイネックス
「一般財団法人教育振興財団の社会貢献活動支援を目的とした第三者割当による自己株式の処分の処分期日の決定および主要株主の異動に関するお知らせ」
定時開示情報閲覧サービス https://www.release.tdnet.info/
財団法人への株式1円譲渡
第三者割当有利発行
株式希薄化

内容

6月29日開催の株主総会において、サイネックス社が保有している自社株式を、1株1円にて有利発行し、財団法人へ割当てる議案が承認されました。
発行する株式数は、150千株ですので、今回の有利発行によるサイネックス社の調達資金は150,000円です。
割当先は、一般財団法人教育振興財団です。当財団は、サイネックス社の代表取締役である村田氏が理事長を務めています。

株式1円譲渡

一般的に、企業が財団法人や社団法人に対して自社株を1円で譲渡するものですが、実務上は譲渡ではなく、株式の第三者割当有利発行の形態をとります。
背景には、企業CSRの一環として、企業が取り組む社会・環境的貢献活動があります。
株式の有利発行であることから、株主総会での特別決議が必要となります。
会社法の規定により、新株発行または自己株式の処分においては、金銭が振り込まれることが条件となっているので、タダで発行することが出来ません
1円という有利な価格で新株を発行することから、株式の希薄化につながり株主利益に影響を与えることから、株主総会での特別決議(3分の2以上の賛成)が必要となります。
財団側は、公益認定あるいは、租税特別措置法40条による認可を受けていれば、1円というタダ同然で株式を譲渡されたとしても、受贈益の認定課税は行われません
企業側は、一旦株式を譲渡してしまえば、配当金によって財団の運営資金を賄うことが出来るとから、都度寄付する事務負担の軽減になります。

1円譲渡への株主の反応

株主からすれば、どうして1円というタダ同然で、財団に株式を譲渡するのかという疑問が生じるのは当然です。
過去には、DMG森精機(6141 東証1)でも同様の提案が付議された際、米国の議決権行使代行大手の反対によって、否決寸前という事態となった事例があります。
企業CSRの一環として、財団の運営資金を寄付する目的であっても、それなりの大義名分が必要ということです。

本件の感想

最近はやりのSDGsの流れに乗る形で、本件も財団への寄付が行われましたが、いささか意図が見えにくいです。
今回の譲渡によって財団が受け取る配当金は、12.5円×15千株=190万円弱ですから、経済効果は少ないように思えます。
東証が進めている市場区分変更への対応も大詰めを迎え、悪戦苦闘している企業がいる一方で、このタイミングで譲渡が行われたのは、他に目的があったのかも知れません。
過去には、DMG森精機だけでなく、トヨタ自動車やキューピーといった時価総額が大きい企業が1円譲渡を行っていましたが、最近は、時価総額の大小には関係がないようです。
先月も1円譲渡を株主総会に付議することを進めていた企業が、総会直前で取り下げる(恐らく票読みが外れた)という事案も出ています。
企業CSRと大義名分、経済的効果をバランスよく取り入れることが必要だと考えさせられます。
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