有償ストックオプション

今回は不動産事業会社のADワークスグループ(2982 東証1 時価総額69億円)による有償ストックオプション発行の話題です。

出所:2021年8月12日 株式会社ADワークスグループ 
第5回新株予約権の発行に関するお知らせ 
適時開示情報閲覧サービス

概要

ADワークスが、グループ会社の役職員に対して、新株予約権を発行しましたが、対象株価が同社の株価ではなく、S&P500指数を指標とするものです。

S&P500指数が、8/11終値の70%を一度でも下回った場合には、同社の新株予約権を権利行使価額(8/11終値)で、期間満期日までに強制的に行使させられ(強制行使条件付)ます。

仮に70%を下回っても同社の株価が8/11の終値を上回っていれば、権利行使価額はその日の株価の130%に引き上げられます。

有償ストックオプション(有償SO)とは

権利付与したときの株価で新株予約権を発行します。

この時点で将来、新株を購入しなければならないという条件がつく場合が多い印象です。

その場合、権利行使をするときに価格が上がっていれば、その差額が利益となりますが、株価が権利付与時より下がった場合には、損を被ることになる可能性があります。

【有償SO一連の流れ】

①有償SO発行(行使価額:100、発行価額30)⇒ 発行価額30払込

②株式取得 SO行使(株価:500)

  ⇒ 行使価額100払込、株式含み益:370(500-100-30)行使時課税なし

③株式譲渡(株価;1,000)⇒870(1,000-100-30)譲渡時に20%課税

(参考)税制適格ストックオプション(適格SO)

①無償SO発行(株価&行使価額:100)

②株式取得 SO行使(株価:500)

  ⇒ 行使価額100払込、株式含み益:400(500-100)行使時課税なし

③株式譲渡(株価;1,000)⇒ 900(1,000-100)譲渡時に20%課税

年間権利行使限度額:1,200万円まで

(参考)税制非適格ストックオプション(非適格SO)

年間権利行使限度額はないが、SO行使時に給与所得課税

開示情報を見て思う事

自社の業績とは関係のないS&P500指数が30%下落したら、責任を取ってADワークスの新株予約権を行使しなさいという内容です。

確かに自社の株価が上昇していれば、米国の株式市場がどうなろうと関係はないのですが、なかなか無理筋の気がしますがいかがでしょうか?

この新株予約権を導入する目的を、役職員の投資マインドの醸成と自社株による資産形成となっています。

話題作りのような気もしますが、面白い内容だと思います。

有償ストックオプション(有償SO)の公正価格

未上場企業の税制適格ストックオプションは、公正価格がゼロであるため、費用計上もゼロとなり、損益計算書上 営業利益を毀損することなく発行することが可能です。

従って、IPO前にオーナーの持株比率引き上げを目的とした、有償ストックオプションが使われる場合があります。

一方、上場企業がストックオプションを発行する場合、会計上はその公正価格を費用計上する必要があります。

上場企業の場合、SOの公正価格は、将来、権利行使価額を上回ることへ期待に相当する時間的価値と、権利行使した場合に発生する利益に相当する本源的価値の合計と考えます。

ストックオプションの会計基準変更

公正価格をより安くする目的から、権利行使条件に業績条件等を付加したものを、権利確定付有償ストックオプションと言います。

従来、有償SOの一種である権利確定条件付有償SOは、会計上費用計上する必要はありませんでした。

そのため、上場間もなくキャッシュが少ないIT企業が、こうした権利確定付有償SOを発行する事例が後を絶ちませんでした。

しかし2018年4月より、国際会計基準に合わせる為に、権利確定付有償SOは費用計上するように変更されたことから、権利確定条件付有償SOの在り方が変わってきました。

強制行使型の有償ストックオプション

公正価値を出来る限り低くすることへのチャレンジの結果として、強制行使型の有償SOが生まれました。

本来、ストックオプションは、株価が権利行使価格を下回った場合には、権利を放棄することが出来ますが、強制行使型は、付与された役職員に権利を強制的に行使させるものです。

通常のSOは、付与された役職員にとっては、権利を放棄出来る限りは価値がマイナスになることはありません。

しかし、権利放棄を出来なくすることで、価値がマイナスにも成りうるので、公正価格をマイナスとすることが可能です。

そこで、株価>権利行使価格のプラス分と、株価<権利行使価格のマイナス分を組み合わせることで、SOの公正価格をゼロにすることを考えたのです。

まとめ

今回の有償SOには、強制行使条件が付与されていることから、恐らく、ADワークスはこのSOに関しては、ほとんど費用計上することなく会計処理をしているはずです。

株価の上昇に自信がなければ、なかなかこの手のストックオプションを導入するのは二の足を踏んでしまいそうですが、流石ですね。

 

 

 

 

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